夢かけ「KOキング」門下に鹿児島市の施設出身2人

南日本新聞エリアニュース 2010年8月24日(火)

夢かけ「KOキング」門下に 鹿児島市の施設出身2人 (2010 08/23 11:27)

鹿児島市の児童養護施設で過ごした2人が、東京・荒川区のボクシングジムで練習生としてプロデビューへ汗を流している。一度はリングから遠ざかったが、「平成のKOキング」として知られる元プロボクサーでジム会長の坂本博之さん(39)と対面して再起を決意。バイト生活をしながら「結果を残すことが恩返し」「やるからにはチャンピオンに」と意欲を見せている。

練習生は錨(いかり)吉人さん(21)=西之表市出身、葛飾区=と、若松一幸さん(18)=鹿児島市出身、同。同市皆与志町の児童養護施設たらちね学園で生活し、高校時代はともにボクシング部に入っていた。だが、ともに夢半ばで中退し上京、リングから遠ざかっていた。

2人を案じた、たらちね学園時代の恩師が1年がかりでってをたどって、坂本さんと連絡を取り、引き合わせた。坂本さんは虐待を受け、児童養護施設で暮らした経験があり、現役時代から養護施設の支援活動に取り組んできた。

「ボクシングが中途半端で悔いがあった。このままじゃだめだと思った」(さん)とそれぞれ再起を決めた。居酒屋、うどん店でバイトをしながら時間を見つけサンドバッグをたたく日々。錨さんはスーパーバンタム級、若松さんはスーパーフェザー級でデビューを目指している。

今月上旬のジム開きで、2人はスパーリングを披露した。元世界チャンピオンの内藤大助選手らも見詰める中、2人は互いに鋭いパンチを繰り出し、持ち味を見せた。錨さんは「緊張してがちがちだった。期待にこたえて早くプロになり、結果を残すことが坂本さんへの恩返し」。若松さんは「今は自分のためとしか言えないが、やるからにはチャンピオンに」と意気込む。

坂本さんはボクシングを通じて2人の自立をサポートする考えだ。「大人に傷付けられた2人だが、理解して心のカギを開けられるのも大人しかない。熱く指導をすれば熱をもってこたえてくれる。プロとしてやってゆけるよう最高の力を引き出したい」と語った。

ジム会長の坂本博之さん(中央)と練習生の吉人さん(左)、若松一幸さん=東京都荒川区

坂本博之会長(左奥)が見つめる中、スパーリングする吉人さん(右)と若松一幸さん=東京都荒川区