児童施設の訪問を続けボクシングジムを開設

東京新聞 2010年(平成22年)

児童施設の訪問を続けボクシングジムを開設

坂本博之さん

■就職の世話や人生相談にも応じたい

虐待を受け、児童養護施設で過ごしたことがある元プロボクサー。八月、東京都荒川区にボクシングジムをオープンした。

二人の練習生は鹿児島市の施設出身だ。「今後も施設の子を受け入れ、自立させたい。就職の世話や人生相談にも応じられるようなジムにしたい」と意気込む。

現役だった二〇〇〇年に、施設の子どもたちを励ますため「こころの青空基金」を設立。全国を回り、ボクシングの指導を通して子どもたちを元気づけた。

小学校低学年の時、弟と一緒に預けられた家で虐待を受けた。ほうきでたたかれ、冬でもバスタオル一枚で玄関口で寝た。平日は学校の給食、土日は食事を与えられず、ザリガニを捕って食べた。

弟が栄養失調で倒れて、周囲が虐待に気づき施設に入った。

施設のテレビで試合を見たのがボクシングとの出会い。練習に没頭すればするほど、応援の輪が広がっていった。信条の「熱(意)を持って接すれば、熱をもって返ってくる」はそんな様子を表したことばだ。

基金はジムに入門した施設出身者の生活基盤が安定するまでの支援にも充てる考えだ。福岡県出身。三十九歳。

(川口晃)