毎日新聞 2012年(平成24年)9月28日(金)
大人が動けばいじめなくなる
ボクシングの元東洋太平洋ライト級王者で「SRSボクシングジム」(荒川区)の坂本博之会長(41)が、児童虐待やいじめ防止へのメッセージを発し続けている。少年の頃に育った児童養護施設への訪問を続ける傍ら、学校関係者ら大人に向けた講演も重ねている。【山崎征克】
荒川のボクシングジム会長
元王者・坂本博之さん
教育関係者に講演重ね
少年期過ごした児童養護施設も訪問
「一人一人の大人が行動すれば、虐待もいじめもなくなる」
坂本会長の言葉は簡潔で真っすぐだ。大津市の中学生のいじめ自殺は「兆候に気付いていたなら、大人が動くことで絶対に防げた」。各地で起きる児童虐待事件も「周囲がおかしいと感じた時点で児童相談所や響察に相談すべきで、簡単なことだ。見て見ぬふりが一番いけない」と話す。
福岡県生まれ。幼少の頃、預けられた知人宅で虐待を受け、その後の一時期を福岡市の児童養護施設「和白青松園」で過ごした。10歳の頃、弟が学校でいじめを受け、夜中に相手宅を訪れて親に「やめてください」と訴えた。いじめは翌日からパタリとやんだ。
強打者としてならした現役時は世界タイトルに4度挑戦。壮絶な打ち合いとなった畑山隆則さんとの一戦 (00年)は語り継がれる名勝負だ。引退後は全国の児童養護施設で子供たちとふれあう。
「『やられたらやり返す』ではない。行動すば、現状を変えることができる」強い者が弱い者を守るという、子供たちのルールが徹底した和白青松園で学んだ「いじめはなくならない」と決め付ける大人には「何か行動したんですか、と問いたい。行動してきた者として、絶対になくなるとじている」と訴える。
坂本会長は引退した07年以降、いじめ問題や児童養護施設の子供たちとのつながりをテーマに200回以上、講演した。15日には荒川区で教育関係者約800人を前に「現役時代に学んだこと」を話した。最近は「いかに子供に夢、希望を持たせるか」とのテーマが多いという。
ジムの名は「Skyhigh RinoS(天に届くほど高い心の輪)」の略。その「輪」を広げるため、前に進み続ける。
「近くにいる大人が子供たちを支えないといけない」と話す坂本会長=
荒川区のSRSボクシングジムで